その人影は、唐突に現れた。

 うっそうとした木々の中でも、特に大きく枝を伸ばした木の根元に、彼女は立っていた。

 真名に負けず劣らずの長身に、真名や佐渡羽良と同じ、中等部の制服を着た少女――――。

「拙者は、甲賀中忍長瀬楓――――と言ってもわからんだろうからなぁ。えーと、端的に言えば、そこで寝転んでる龍宮真名の親友……」

 そこで楓は言葉を切る。

「――――もとい、フィアンセと言っておこうか?」


 ――――本当に大馬鹿だな。あいつは。

 
 茫洋とした意識の中で、しかしはっきり聞えた楓の冗談に、真名は内心苦笑する。
 しかし、それでは笑えないのが佐渡羽良だった。

「フフフフフフフフィアンセですって!? ふざけるのも大概にしなさいっ! 龍宮先輩は私のペット……
もとい大切な子猫ちゃんなんですっ!! 私の大切な人を横から奪うおつもり!?」

 ヒステリックな声でそう叫び、唐突なことに固まっている大男三人に目配せする。

「何を申すかお嬢さん。拙者、もう既に真名とは色々と――――そうさな、突然人の多いカフェテラスで
凄いことをされたり、信じられない勢いであーんなことをされたりと、もはや自他共に認める名カップルでござるし」

「凄いこと!? そしてあんなことですって!?」

 突然椅子を投げつけられたり、信じられない勢いで走り去られたり……まさに自他共に認める迷コンビ。
 語弊がないように言えばそうなるのだが、佐渡羽良はもっと歪んだ大人の発想をしているらしく、
顔を真っ赤に染め上げて憤慨している。

「――――龍宮先輩の純情を奪うのは、ワタクシだと……ワタくシだと決まっテオりまシたのにぃイイぃぃぃ!!」

 さらりと恐ろしいことを言いのけると、大男三人に向けて佐渡羽良は叫んだ。

「輔さん核さん蜂兵衛! 野外であんなことやってのける――――あの淫乱雌豚女をブチ殺すんですのォ!!」

「――――御意に、お嬢」

 佐渡羽良の命令一括、大男三人はすぐさまお楽しみを中断して、各々の得物を構えた。
 デザインナイフにチェーン、そして金属バット。
 身近にある凶器という凶器を集めたような男達を見て、楓はひゅう、と口笛を吹いた。
 男達から見て、おそらく楓は『お楽しみが一人増えた』程度にしか思っていなかったのだろう。
 先程、金属バットの一撃ですんなり昏倒した真名を見ていたし、何より楓は真名に負けず劣らずの体型をしていたのだから。
 目先の欲望と余裕に支配された男達には、絶対的な隙があった。

 勿論、隙があろうとなかろうと、臨戦体勢の楓相手に、多少訓練した程度の男三人が敵う訳もなかったのだが。

「シャァ――――ッ!!」

 奇声をあげながら、ナイフを構えたスキンヘッドが一歩前にでる。
 その後ろに付くように、巨体を奮わせてバットを構える蜂兵衛、そしてチェーンを振り回すドレッドヘアーが続く。
 スキンヘッドのナイフを避けたら、続けざまに中距離・遠距離で攻撃できる二人が飛び掛る――――スタンダードだが、
実に効率的な攻撃である。
 ――――ただし、それは常識の範囲内で、での話なのだが。

 スキンヘッドのナイフが、楓の体を射程距離に捕らえる。
「もらったァ――――!!」
 スキンヘッドが叫ぶ。
 叫んだ瞬間、視界から楓の姿が掻き消えた。

「――――ッ!?」
 空を切ったナイフをみて、スキンヘッドは唖然とする。



 
「へぶらっ!!」

 次の瞬間、スキンヘッドの背後で男の悲鳴が聞える。
 すぐさま振り向くと、楓がドレッドヘアーと対峙していた。――――その間にいたはずの蜂兵衛の姿は、ない。
 少し脇を見れば、木にめり込んで昏倒している蜂兵衛の姿が見受けられただろうが、あいにくスキンヘッドにはそんな余裕がない。
 すぐさまナイフを構え直し、楓に向かって突進する。
 
 しかし楓は落ち着いた様子で、間合いの内側に飛び込まれて動けないドレッドヘアーの股間に向けて、狙い済ました膝蹴りを叩き込む。
 声にならない悲鳴をあげるドレッドヘアーの襟元を、楓は片手で軽く掴むと、ナイフを構えたスキンヘッド目掛けて思い切りぶん投げた。
 スキンヘッドは「チッ」と軽く舌打ちをする。
 仲間にナイフを突き立てるのは得策でない、と判断したのだろう。それだけで隙に繋がるし、心象も悪い。

 少しだけ、ナイフを構える手を下ろして――――

 瞬間、投げられたドレッドヘアーの体から、もう一つ影が躍り出る。

「――――!!」

 楓だった。ドレッドヘアーの巨体に隠れて接近した楓は、判断の鈍ったスキンヘッド目掛けて蹴りを繰り出す。
 伸び上がるような、側頭部への回し蹴りだった。
 直撃を喰らったスキンヘッドは、悲鳴をあげることさえままならずに崩れ、ドレッドヘアーに巻き込まれるように吹っ飛んで近くの木の幹に
激突する。

 ――――数分と持たずに、佐渡羽良のボディーガードは全滅した。

 圧倒的。そうとしか言いようがない。

「さて、これで一通り片付いた訳でござるが――――さて、総大将のお嬢さん。おぬしはどうす」

 ぱんぱん、と両手をはたきながら、楓は佐渡羽良の立っている方に視線を向ける。
 視線を向けるが、そこに佐渡羽良の姿はない。

「――――むぅ、逃げ足の速いこと」

 よくよく目を凝らしてみれば、延々と続く森の中を、佐渡羽良が猛スピードで走り去る姿が見受けられた。
 蜂兵衛が昏倒させられた時点で、既に逃げ出していたのだ。
 もはや小物を通り越して見事とさえ言えた。形振り構わず逃走するその姿も、どこか板についている。

「やれやれ全く――――災難だったでござるな、真名よ」

 佐渡羽良の姿が見えなくなると、楓はくるりと踵を反し、タイルに倒れる真名の方にのんびり歩み寄る。

「しかしまぁさかおぬし程のプロフェッショナルが倒されるとは……大方油断していたのでござろうが、まぁ人生何事も経験でござるし」
 
 尚も虚ろな瞳を空に向ける真名の近くにしゃがみこみ、楓はペラペラと好き勝手に言葉を捲し立てる。
 しかし、真名の頭にはその一語一語が入ってこない。
 まるで、頭に入った瞬間、血と一緒に流れ出てしまうかのように。

「……という訳で……って真名、どうしたんでござるか妙に無口だが。何か、拙者を心配させようとでも思っているのか?」

 どうやら楓は、事の重大性に気付いていないらしい。
 真名の出血量は、正直危険水準に達しようとしていた。
 いつまでも無言の真名を見て、楓の血の気がすぅー、と引いていく。

「……あれ。おーい。真名ー? え、あれ、嘘ちょっとヤバイでござるか? え、『気』でガードしたんでござろう?
何、してないの? ええええええ、ちょ、真名、真名ー! 気を確かに持つでござるよ! 救急車、救急車ー!!」

 思い出したように取り乱す楓。
 相変わらず無言の真名。

 ――――真名が病院に担ぎ込まれたのは、それからすぐのことだった。



 □




「なるほど、それで隙を突かれたか。いやはや全く、人間何が起こるかわかったものではないなぁ」

 白い床と壁がまた無闇に清潔な、麻帆良学園都市内部にある総合病院。
 その一角にある病院の個室で、楓と真名はぐだぐだと駄弁っていた。

 ――――結局、あの後病院に運ばれた真名は、不幸中の幸いというか、なんとか一命を取り留めた。
 恐ろしいことに、頭蓋が一部陥没していたらしい。
 しかし、処置が早かったことと、単純に運が良かったためもあってか、別段後遺症が残る事もなかった。
 首の骨が無事だったのは、もはや奇跡だったらしい。

 本人の驚異的な回復力も手伝って、入院生活一週間目にはもう退院できるほど元気になっていたのだが、担当の
老医師が『若い時分ににゃ体を大切にせいこの大馬鹿めが――――ッ!』と激昂し、結局一ヶ月間の入院生活を
余儀なくされた。それでも結構オマケしてくれたらしいのだが。

 しかし、それだけで済むほど真名の周辺は大人しくない。
 真名が入院している間、心配したクラスメートやら教員やらが大挙として病院に押し寄せ、代わる代わる
大騒ぎしたために、一度など例の担当老医師が『五月蝿いわ小童どもめが――――ッ!』と大激怒。
 三年A組のクラスメイト三十人と取っ組み合いを始めたあげく、流血沙汰にまで発展するはめとなった。
 あの時はもう、白い病院の廊下が一面真っ赤になっていましたよ。(三年A組担任:ネギ・スプリングフィールド談)

「しかし、なんだ。お前はよく私のいる場所がわかったな。私でさえ一度も行ったことのない場所だったのに」
 真名は少し嬉しそうに、ベッドで上半身を起したまま、言葉を投げる。
 楓の方はは、真名のベッドの脇に置かれた、簡素なパイプ椅子に座っていた。
 あの時、真名がいたのは道路沿いに作られた散歩道だった。基本的に人通りも少なく、その理由も『わざわざ歩くなら
舗装されていないタイルの道よりもきちんと舗装された歩道を歩いた方が無難だ』という単純なものだった。
 どうも、無意識の内に道路を外れて迷い込んでいたらしい。
「いやぁ……なんというかあれでござるよ。それはもう正に一種の奇跡、ラブ・パゥワーとでも言ってくれれば
もうなんというかもぎゅん」
「くだらんことを言うな」
 どうしようもないほどお馬鹿な言葉を平気で並べ立てる楓の顔面に、真名のぶん投げた枕がクリーン・ヒット。
 柔らかい枕といえども、ゼロ距離で投げられるとそこそこに痛い。変な断末魔の叫びと共に、楓はくらりと頭をもたげた。
 しかし、枕を投げた真名本人はまんざらでもないらしく、少し頬を赤らめて楓を睨んでいた。

 ちなみに、本当のことを言ってしまえば、楓はカフェでの騒ぎの後、道行く人に片っ端から『猛スピードで黒い長髪の
女性が走っていかなかったか』と尋ねたそうだ。
 無論、街中で全力疾走する黒髪女性がそう多くいるはずもなかったので、足取りは簡単に掴めたらしい。
 最終的に、真名の足取りは散歩道のやや手前で途絶えてしまったのだが、あとはいわゆる『野生の勘』なのか
『愛の力』なのか、何のことはなしに入った散歩道で、佐渡羽良一味と昏倒した真名を見かけた、ということだった。

「全く、真名の愛の形はいつも乱暴で困る……恥ずかしがらずに拙者の胸に飛び込んでくるでござるよっ! さぁさぁさぁっ!」

「五月蝿い! お前本当に馬鹿なんだろう!? この馬鹿! 大馬鹿!」

「馬鹿とはなんでござるかっ!? 馬鹿と言う方が馬鹿、という日本古来の含蓄ある言葉を知らないとは! 馬鹿ッ! 真名の
大馬鹿ッ!」

「ああ、そうだな」

「弁解しても無駄でござるよ! 真名が馬鹿と言った時点で既に真名自身も馬……」

 小学生のような論理で捲し立てる楓は、そこでふと言葉を途切る。

「――――え? えーと……そうだな、っていうのは――――」



 突然のことに楓はうまく反応できないでいると、真名は突然ベッドから体を下ろし――――



 ぎゅっ。



 楓に、思い切り抱き付いた。

「…………」

 一瞬、楓は凄まじく狼狽するが、そんな態度もすぐに一変した。

 抱きついてきた真名は、小刻みに震えていた。

 あの時の記憶が蘇えって、今更怖くなったのか。
 それとも、カフェテラスでの一件を後悔して、なのか。

 ――――もしくは、その両方なのか。


 ただ楓は、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる真名の顔を、少しでも見ないようにしながら、
穏やかな顔で真名の背中を撫でていた。
 微かな嗚咽が聞えて、楓自身も少し泣きそうになる。


 ――――いくら強く見せかけていても、結局人間は弱いものなのだ。

 増して、真名は女の子だ。精神の弱い子ならば後遺症でも残りそうな体験をしていて、それでも尚気丈に振舞える
はずがない。


「――――私は……っぐ、いつも、いつも我が侭で――――」

 言葉にならない言葉を、真名は口に漏らす。

 自分のことを、いつもいつも理解してくれたあの人を失った――――その時以来、一度も喋ったことのない本音で。

「――――理解、してくれた人……ひぐっ……のいた、過去に、すがってて――――」

 楓は、口を開かない。

「――――みんな、理解してくれないって……ひっ、ひぃぃ……思ってて……」

 嗚咽で何度も言葉を途切りながら、真名は言葉を続ける。

「――――ほんとう、は……わかってくれる、人だって、いたのに……ひぐっ、それを、それを認められなくて――――」

 語る。

 自分自身を、根底から理解してくれていたあの人がいて。

 あの人を失って――――それ以来、自分を理解してくれる人はもういないのだ、と勘違いして。

「――――気付いたら、一人だった。誰も、友達も――――っぐ、信じられなく、て――――」



 気丈に振舞って。

 人を寄せ付けないようにして。

 傷つきたくないから、傷つかせたく、ないから。

「――――私が、……私が、馬鹿だったから――――」

「果たして、そうかな?」

 そこで、楓が口を挟んだ。

「真名はきっと、早くに『自分を完全に理解してくれる人』に会ってしまって――――それで、自分をわかってくれる人がいた
その環境に、慣れてしまったのでござろう」

 囁くように、なだめるように言う。

「仕方ないことでござる。真名自身、その環境を動かすことも、自由に操ることだってできないのだから。――――拙者だって、
真名と同じ境遇にあれば、そうなっていたはずでござる」

「――――でも――――」

「だからこそ、少しずつでも慣れる必要がある」

 楓は一度、言葉を止める。

「難しいことでござるよ、人を信じることは。人は所詮、自分以外みな他人――――信じろという方が難しい。だけど真名は、
信じようと努力していた。努力する意志があって――――だから今、泣いている」

 真名は、相変わらず泣いている。

「ただ、努力する方法が間違っていた。真名――――おぬしは、ただ『あの人』のことを忘れようとしていただけなんじゃないでござろうか?」

「―――――……」

「それは間違っている。忘れるのではなく――――抱えるんでござる。背負って、抱きかかえて――――人は重荷を背負う。
背負わない者は人ではない。人や命を背負えるのは、背負っていることを実感できるのは――――人間だけなのでござる」

 真名の嗚咽が止まった。

「忘れようと抗うから窮屈になる。全て背負って、振り返ってみるでござる――――きっと、新しい何かが。


 信じてくれる人が。

 愛すべき人が。


 見えてくるはずでござる。
 重荷を背負っても、笑顔で生きていくことができれば――――」




「きっと、幸せになれる。――――拙者は、そう思って生きてきた」

 楓は、言った。

「拙者にもできるのだから、真名にできぬはずがない。真名は強い。拙者よりもずっと」

 少しだけ、笑う。

「……それに、強くなるためには――――少しくらい泣いたって、お天道様は見逃してくれるでござろう?」

「――――楓……かえでぇ……」

 ぎゅ、と楓を抱き締める腕の力が強くなる。
 真名の口から、再び嗚咽が漏れる。

「うぐっ、ひぃ……ひぃ――――……」
「おー、よしよし、無理することはないのでござる。頑張らなくても大丈夫でござる。知っているだけで、
真名は強くなれるでござるよ……」

 ごめん、ごめん、と真名は連呼する。

 楓はただただ、泣きじゃくる真名の背中を撫でつづけていた。

 ――――窓から入り込む光がやけに心地良い、病院の一室で。



 □




「……楓、悪かったな……その、取り乱してしまって」

 泣きじゃくる真名をなだめ続けて、もう一時間近くが経とうとしていた。
 大分落ち着いてきた真名は、しかし楓に抱きついたまま動こうとせず――――それでもいつもと変わらぬ調子で、
やや気恥ずかしげに話し掛けていた。

「いやいや、こっちは安心したでござるよ。いつも感情を溜め込んでるようだったから、ひどく心配していたので
ござる。――――それに、真名の女の子らしい一面もあぎゃぁぁっ!!」

 真名が、抱き付いた両腕に猛烈な力をこめる。
 両腕に挟んだカジキマグロを絞め殺す勢いの、屈強な漁師の姿が背景に現れる。
 油断していた楓は、真名の凄まじい怪力に締め上げられ、形振り構わず悲鳴をあげ――――


 どがらがしゃんっ!


 そのまま体勢を崩して、もつれ合うように二人は床に雪崩れ込んだ。
「……あつつ、真名、唐突に攻撃するのは勘弁してほしいでござる……」
「お前が変なこと言うからだ。大体これくらいで体勢を崩すなど、軟弱な」

 
 がらがらがらっ!


「龍宮さーん! お見舞いにやってきま」


 …………。


 そこで、時が止まった。

 何故かって言われれば理由は単純で、真名の視線が病室の扉――――開け放たれた、横開きの扉の辺りで止まったからだ。

 なんで止まったか、といえばそれは簡単なことで、横開きの扉が開いていたからだ。

 なんで開いていたか、といえば、そりゃもう火を見るより明らかなことだが、人が入ってきたからだ。

 お見舞いにやってきた、三年A組のクラスメイト全員が入ってきたからだ。

「――――…………ッ!!」

 真名の顔が熾烈な勢いで赤くなる。

 対する二十九名のクラスメイトも、病室での光景に驚いてか、石像のように固まって貝のように押し黙る。
 先頭に立って、大きな花束を抱えた担任――――齢十歳の英語教師、ネギ・スプリングフィールドにしてみても、床に
転がった二人の姿は衝撃的だったに違いない。

 楓の上に乗っかった、真名。
 制服をはだけさせた楓が、観念したように真名を見て。
 入院者に配られる、薄緑色の入院服をはだけさせた真名が、意地悪そうに楓を見る。
 多分、最初からこのやり取りを見ていないクラスメイトにしてみれば、この光景は『真名が楓を押し倒して大人の階段昇る』ってぇ
シチュエーションにしか見えない。


「――――あの、明日菜さん……これは一体どういう(担任教師:ネギ・スプリングフィールド)」
「しっ! 馬鹿ネギ! 二人の世界はもう人体練成以上に踏み込んじゃいけない禁忌の世界なの! 引き返すわよ!(8番:神楽坂明日菜)」

「あーん、ええなー二人共。私もせっちゃんと一緒にあーゆーのしたいわー(13番:近衛木乃香)」
「ええっ! おおおお嬢様、そんないけませんそんなことは! ああああ、そんなところを触られては困ります(15番:桜咲刹那)」

「あらあら。おほほほほほほ(出席番号21番:那波千鶴)」
「うわー、千鶴姉、笑ってる場合じゃないよ……いくらなんでも間が悪いよ……(28番:村上夏美)」

「大丈夫、今の同人業界はそういうのにも十分ニーズがあるからっ!(親指をぐっと立てながら)(14番:早乙女ハルナ)」

「ああ、ずるい……長瀬さんずるい……(出席番号6番:大河内アキラ)」

「………………(ぐいぐい)(31番:ザジ・レニーディ)」
「うわなんだザジ! ちょ、ちょっと待て引っ張るな! こんな場所でそんなことしたらあああああ!!(25番:長谷川千雨)」

「なんだ、面白そうなことをしているな。おい茶々丸、ちょっとひやかしてやれ(26番:エヴァンジェリン・A・K・マクダゥエル)」
「了解しました、マスター。『ヒューヒュー、お二人さんお熱いねー』(棒読み)(10番:絡繰茶々丸)」
「……古臭いなそれ。もうちょっとなんかないのか(26番:エヴァンジェリン・A・K・マクダゥエル)」
「『さくばんは おたのしみでしたね』とか納豆にネギ入れるタイプ?でよろしいでしょうか?(10番:絡繰茶々丸)」
「……お前、あんまり葉加瀬とかに人工知能イジらせるなよ……?(26番:エヴァンジェ(以下略)」


「……すいません、お楽しみ中お邪魔しました。今日はここらへんで……」
 言いつつ、さっさと帰宅モードの担任教師・ネギ・スプリングフィールド。

「ね、ネギ先生……これは、これはちょっとした事故で……」
 弁解する真名。

「そんな……真名、拙者にあんなことをしておいて、今更事故だなんて……(ポッ」
 悪ふざけ続行の楓。

「あんなことってなんだ貴様ァァァ――――ッ!! ふざけるな訂正しろ馬鹿! ああくそ朝倉お前写真撮るな――――!!
ネギ先生――――! 誤解だ――――ッ! うわぁぁあぁぁ! 大河内アキラ……さん、なんで私の上に乗っかってくる!?
お前等覚えていろよ――――!?」


 真名の絶叫。

 逃げ去るクラスメイト。


「まーまー、人生は重き荷を背負うてなんとやら……早速実践の時が来たのでござるよ? 真名」

「こんな荷を背負うのは御免だっ! このプラトニック馬鹿――――ッ!!」


 そして、物語の幕は閉じる。


 幸せの形も結末も、人それぞれだった。


 了





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